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医師が解説「なんでそれ免疫にいいの?」ビタミン“だけ”、乳酸菌“だけ”…では効果なし!?

大竹真一郎先生

大竹真一郎先生

感染対策『食』2020冬!

新型コロナウィルスの感染拡大は、まだまだ予断を許さない状況にあります。
それに加え、日本ではもうすぐ気温が低く湿度の低い冬。冬の気候はウィルスの生存期間を延ばしてしまい、かつ、人間の免疫力を低下させるため、今後ますますのウィルス感染リスクの増大が懸念されます。3密を避け、手洗い・うがいを確実に実施し、換気や部屋などの掃除・消毒を心掛けることは継続すべきですが、冬に向けて、さらに自分自身の「免疫力」を高め、感染リスクを低減させておきたいところです。

2020年から2021年に向けての冬、自らの免疫を調整し、ウィルス感染リスクを低減させるために知っておくべき基礎知識と最新情報を 医師の大竹真一郎先生に伺います。

睡眠不足・疲労・栄養不足(偏り)がある限り、免疫力は向上しない!

睡眠の質が悪かったり、睡眠時間自体が確保できていないと疲労が蓄積します。
疲労が蓄積し、食欲が落ちると栄養不足になります。不足している栄養素があると、様々な器官の働きが失調し、自律神経の乱れなどが現れます。こうなるとさらに、睡眠の質が低下し、身体が休養を取ることができず、回復力が低下します。この悪循環の中で、免疫バランスも当然崩れてしまいます。

疲労からくる精神的なストレスも、腸内環境を悪化させ、これも免疫バランスに悪影響を及ぼします。
疲労・睡眠・栄養不足・免疫と一端だけを意識したケアではいつまで経っても感染リスクを低減することができないでしょう。トータルにどれも意識することで負の連鎖を断ち切りましょう。

ビタミンCだけ、Dだけ、乳酸菌だけ、食物繊維だけ…を摂っても免疫調整はできない!

「桶理論」といって、身体が必要としている栄養素のうち何かの栄養が不足していたり極端に少なかったりすると、その、最も少量の栄養素と相互作用できる範囲でしかそのほかの栄養素も働かないと言われています。つまり、栄養のバランスを考慮せずに、ビタミンCだけ、ビタミンDだけ、乳酸菌だけ…など、免疫によさそうなものだけを重点的に摂取することだけでは免疫力の向上に繋がらない可能性が大きいのです。

桶理論
特定栄養素だけを突出して摂っても意味がない「桶理論」

免疫にほんとうに効果が期待できる栄養素は?

乳酸菌

乳酸菌にはたくさんの種類があり、それぞれ特徴が異なります。一般的に、乳酸菌は腸内環境を整えることも知られていますが、腸内環境が整うこと自体が免疫力の向上につながることが分かっています。また、乳酸菌の中には、それ自体が免疫細胞を活性化させる種類があることも知られています。
ヨーグルトを毎日食べるなどはおすすめです。

β‐グルカン

β‐グルカンは食物繊維の一種ですが、マイタケやシイタケの様な茸、酵母、穀物など様々な食材に含まれており、由来によって水溶性のものと不溶性のものがあり、どちらも重要です。β-グルカンは、一般的に免疫を上げる効果が報告されており、マイタケではインフルエンザワクチン効果の増強作用である「アジュバント作用」があることもわかっています。

特に注目のβ―グルカンが、ユーグレナに含まれる「パラミロン 」

ユーグレナ パラミロン

食物繊維の中でもユーグレナに含まれる「パラミロン」(β-グルカンの一種)は近年、免疫調整効果があるという結果が発表されています。

パラミロンは、不溶性の食物繊維であるので、その形を保ったまま腸内に到達すると考えられています。免疫細胞の70%は腸内にいるとされており、腸管に到達したパラミロンは免疫細胞と出会います。パラミロンは免疫細胞が持っている受容体に結合し、他の免疫細胞に指令を送ります。パラミロンを継続的に摂取することで、免疫が常に準備している状態になるために、感染リスクが低下することが期待できます。

ユーグレナは自律神経を整えてストレスを緩和させる働きもあります。
自律神経のバランスの乱れは、免疫のバランスの乱れにもつながりますので、そのことを介しても、免疫をサポートしてくれると期待できます。
藻の一種で植物のように光合成をしつつ、自分で動くことができる特異な生き物であるために、肉・魚・野菜などが持っているような、人が必要とする栄養素をほぼすべて網羅している(炭水化物以外のほぼすべての栄養素を摂ることができる)ことも、免疫サポートに活用しやすい食品といえます。

LPS(リポポリサッカライド)

リポポリサッカライド(LPS)は土の中にいる細菌由来の成分で、畑で育つ野菜、穀類、海藻類などに含まれています。明日葉やメカブなどに多いとされ、また、漢方の「葛根湯」の原料である「葛根(クズの根)」 にも多く含まれています。
LPSもまた、パラミロンに似た働きで、感染症の原因となる病原体を攻撃し退治する免疫細胞を活性化させることが分かっています。

ビタミンA、E

ビタミンA、Eは、粘膜をつくるために必要なビタミンで、ウィルスが身体に侵入するのを防ぐことに役立つといえます。
ビタミンAは鶏や豚のレバー、あんこう肝、うなぎ、卵黄、にんじん、小松菜、ほうれんそうなどに含まれ、ビタミンEは魚介類やアーモンド、ナッツ、アボカドなどに含まれます。

ビタミンC

皮膚のバリア機能を正常にする役割で、ウィルスが身体に侵入することを防いでくれます。ビタミンCはブロッコリー、ケール、キウイフルーツなどに多く含まれます。

身体を温める食品

ショウガ

通常、人の体温は37度程度であることが好ましいですが、極端に体温が下がってしまうと風邪のウィルスに感染しやすくなることが分かっており、これは他の感染症でも同じことがいえると思われます。
体温が上がり代謝を上げることで免疫力も上がりますが、免疫がウィルスに対抗する過程で産生されるサイトカインと呼ばれる物質によって、体温が上昇するともいえます。
体温を上げる食材としてはショウガ、根菜類などが知られています。

ビタミンD

しいたけ

世界的にも感染予防に効果的と認められ始めたビタミンD。しいたけなどのきのこ類に含まれるビタミンD2(植物由来)と、鮭などの魚類や卵などに含まれるビタミンD3(動物由来)があります。
通常ビタミンは、体の中でつくることができないため、食品などから摂取しなければなりませんが、ビタミンDは、日光(紫外線)に当たることによって、80%~90%を体内でつくることができるという特性があります。

ビタミンDにはヒトの皮膚、気道、腸管などにある、天然抗菌物質(「カテリジン」というタンパク(抗菌ペプチド)や「β-ディフェンシン」という皮膚上にある抗菌ペプチド)を作らせる働きが報告されていることから、免疫サポートをしてくれる可能性が示されています。
干しシイタケ、サケやキクラゲ、内臓ごと食べられるししゃも、しらすなどから摂れます。
食材は天日干しすることでよりビタミンDが増えます。

水分をたっぷり摂ることも感染症リスクを低下させる

水分

冬になり湿度が下がると、ウィルス感染リスクが上がると言われています。その理由の1つが、ウィルスをブロックすべき「粘膜」がうまく機能しなくなること。

喉や鼻などの粘膜の表面には「繊毛」と言われる細かい毛のようなものが生えていて、この繊毛は粘膜が粘液で湿っていて、その湿り気の中で細かく動き、付着したウィルスなどの異物を外へと押し出します。
しかし空気が乾燥すると、粘膜が渇き、また、知らずに脱水をおこしていて分泌される粘液が減り、繊毛が機能しづらくなり、ウィルス感染リスクが上がってしまうことも。夏に比べて喉の渇きに気づき辛い冬は特に、夏よりも積極的に水分補給を。加湿器で部屋の湿度を40%~60%程度にして、夏よりもさらにこまめに水分補給をすることを心掛けると良いでしょう。

ちなみに加湿器で湿度を上げると、湿気を好むウィルスにとっても好条件になってしまうので、こまめに換気をし、床などウィルスが溜まりやすい場所を消毒することも併行して行いましょう。

大竹真一郎先生

監修:大竹真一郎先生
(医師。総合内科専門医、特に消化器内科のスペシャリスト。)

神戸大学医学部を卒業後、愛仁会高槻病院でスーパーローテート研修(多科研修)を行い、その後は消化器専門医として内視鏡検査を中心に研鑽に励む。
大腸内視鏡検査は通算1万例以上行い、おおたけ消化器内科クリニックを赤坂に開院。
テレビ出演ほか、健康法やダイエット関連の著書も多数上梓している。

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